7月中旬の金曜日、午後、JR甲府駅前。
陽射しが熱い――
甲府の夏は、いつもむし暑いのですが、今日はストレートに熱いです。
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武田信玄像

あまりに強い陽射しで、濃淡しか映っていません。

7月のこの時期、となりの石和温泉の笛吹川では、夜、かがり火を焚いた鵜飼いや、花火大会のシーズンです。

ここの鵜飼いは、日本では珍しく、腰蓑を身に着けた数人の鵜匠が、川の中を歩きながら、鵜を巧みに操ります。
後ろには、舳先にかがり火を焚いた平底の小舟が数隻従います。
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甲府駅前からの中心街

ここ数年、甲府市は市街地の再生に取り組んでいるようです。
甲府駅を中心に再整備され、ガラス張り高層の市役所が完成し、街並みが変わってきました。

午後2時頃、このぐらいの時間ならお客さんがいるだろうと、
駅南口から徒歩15分、甲府の中心街を抜けた所にある、”囲碁サロン本院坊”に向かいます。
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囲碁サロン本因坊(二階)

建物1階の左手入口を入り、新しく改装された階段を登ると、廊下の一番手前が、碁会所入口ドアです。
ドアを開けると、碁会所の真ん中におじいちゃんが一人、座っています。

――この人が席亭かな?

「いや違うよ。
 席亭は、もうすぐ来るだろう」

おじいちゃんは、堀口栄一さん、94歳、4段格。
17歳から打っているので、囲碁歴77年! すごい経歴です。

席亭を待つ間、一局、教えていただくことになりました。
予想通り、“碁会所碁”の独特な手を打ってきます。
打っている間、お客さんが一人、二人と現れ、
「何やってんの?」
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席亭・中村哲夫さん(右側)

しばらくすると席亭が現れ、冷蔵庫からボトルを取り出し、人数分のコップに冷えたお茶を淹れてくれます。

「お客さんに、お茶を出すのが私の仕事ですから」
すぐまた、仕事に出かけるというのを引き留め、お話を伺いました。

席亭・中村哲夫さん、68歳、六段格、碁歴51年。
30年前、近くの碁会所が店を閉めたので、ここに碁会所をオープンしました。
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オープンした翌年、平成元年に日本棋院・甲府本因坊支部になります。
それ以来30年間、現在も日本棋院の支部です。
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平成13年には、全国支部対抗戦・山梨県大会で、甲府本因坊チームが優勝しています。
その時のメンバーは、
戸田英昭
内藤富明
草場隆志
中村哲夫(席亭)
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「碁会所を始めた当時、私は仕事を持っていたので、みんなに協力してもらいました。
 席亭になっていただく方、支部長になっていただく方と・・・」
「30年前なら、勢いもあったでしょうね~」
「昔も今も、皆さん知ってのとおりです。
 タダで碁を打てる所が、一杯できたからね」

「平日と土日、お客さんの入りはどうですか?」
「4、5人です。平日も土日も」
「4、5人・・・・」
「あ、でも、月一回の大会には20人位は集まりますよ。
 年末・年始もね。
 朝日アマや、世界アマの地区予選もしています。
 すると、年20回ぐらいかな?
 それでなければ、やっていられない」

中村さん、明らかに、経済的理由で碁会所経営をしているのではなさそうです。
収入目的なら、とっくに止めているでしょう。
では、なぜ続けているのかと、しらじらしい質問はできませんでした。

――この田舎で、30年間、30人の会員を集め、支部を維持しているのですから

中村さん、非常にさっぱりした方です。
取材にも、気安く応じて頂きました。
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堀口栄一さん(右側)

ちなみに、店番の堀口おじいちゃんとの打ち碁は、私が投了ということで終わりました。
700円の場代で、楽しく打たせていただきました。
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焼き鳥、丸八

帰り道、駅近くの焼鳥・“丸八”に寄りましたが、まだ開店前でした。
美味しい焼鳥屋です。
甲府に来ると、いつも寄っている店です。

私は1階が好きで、カウンターと小さな座敷。
店の人もお客さんも、皆さん気さくです。
2、3年振りに来たのに残念でした。

囲碁サロン本因坊
山梨県甲府市中央4-2-17
055-222-6920